観葉植物を背景に絵彩のシルバーの水筒を手に持つ様子

金属アレルギー対応の水筒はどれ? 見るのは口に触れる素材です

この記事でわかることは次の3つです。

  • 金属アレルギーの人が水筒を選ぶとき、どこを見ればいいか
  • ステンレスの水筒からニッケルは出るのか
  • 金属を避ける選び方と、反応の報告が少ない金属を選ぶ選び方

アクセサリーで肌が荒れたことがある。毎日口をつける水筒は、金属のままで大丈夫なのか。そんな不安から「対応」の水筒を探している方に向けて書きました。

金属アレルギー対応の水筒は、口に触れる素材で選びます

先に答えです。見るところは2つ。唇が触れる飲み口と、飲み物が触れる内側の素材です。この2か所が「何でできているか」が、水筒選びのほぼすべてになります。

金属アレルギーは、原因の金属が体に触れることで起きます。どの金属に反応するかは人によって違うため、「誰にとっても安心な1本」は決められません。自分が避けたい金属を、素材の表示で確かめるのが確実です。

内側・飲み口の素材 金属は触れるか 確かめること
ステンレス(内面そのまま) 触れる ニッケルやクロムを含む合金が多い
ステンレス+内面コーティング 膜がある間は触れにくい 剥がれると金属が出る。飲み口の素材は別に確かめる
チタン 触れる(反応の報告は少ない) 体の中で使う医療材料にも使われる金属(後の見出しで説明)
樹脂・ガラス 触れない 保温・保冷ができないものが多い

もうひとつ、素材選びの前に確かめておきたいことがあります。自分が何の金属に反応するかです。原因の金属は、皮膚科のパッチテスト(原因の候補を肌に貼り、反応を見る検査)で調べられます。

金属を含む接触皮膚炎の診断は、パッチテストが基本とされている。日本皮膚科学会「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」(日本皮膚科学会雑誌130巻、2020年)。

反応する人がいちばん多い金属は、ニッケルです

金属なら何にでも反応するわけではありません。検査で反応が出やすい金属には、はっきりした偏りがあります。

日本皮膚科学会のガイドラインに載った全国調査では、パッチテストで陽性になる割合はニッケルが24.8%と最も高く、金23.2%、コバルト7.9%、クロム2.3%と続きます。

「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」(日本皮膚科学会雑誌130巻、2020年)掲載の2016年度調査より。この割合は、接触皮膚炎などが疑われてパッチテストを受けた人の中での数字であり、日本人全体にアレルギーの人がこれだけいる、という意味ではない。

水筒との関係で言うと、ステンレスはこのニッケルとクロムを含む合金です。製品の材質欄に「18-8ステンレス」とあるのは、クロムとニッケルを含む種類を指しています。

細かい数字を覚える必要はありません。「金属で反応が出る人は、ニッケルのことが多い」。選ぶときは、これだけで足ります。

一方で、触れたものが原因の皮膚炎全体で見ると、原因と特定される製品は化粧品類が過半で、医薬品が続き、アクセサリー類は9%ほどです。金属に限った内訳ではありませんが、水筒が原因と特定された症例の報告は見当たりません。「ステンレスの水筒を使っている」というだけで、慌てる必要はありません。

原因製品の内訳は「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」の全国調査(2016年4月〜2017年3月、423件)より。化粧品・薬用化粧品54%、医薬品25%、装身具・装飾品9%。金属アレルギーに限った内訳ではない。

ステンレスの水筒からニッケルは出るのか

「出ない」と言い切ることはできません。ただし、ふだんの水やお茶で問題になる量が出た、という報告も見つかりませんでした。

古くから引かれるのは、国立衛生試験所(今の国立医薬品食品衛生研究所)が1997年に行った試験です。新品のステンレス器具を酸性の液に浸したところ、ニッケルは検出されませんでした。

ここで気をつけたいのは、「検出されず」は「入っていない」という意味ではないことです。この試験の機械では、ごく少ない量までは測れませんでした。論文自身が、こう書いています。

検出限界が15ppbとクロムより高いことから検出されなかったものと思われる。(中略)更に厳しい溶出条件であれば、溶出が認められたであろう

河村葉子ほか「ステンレス製器具及び食器からの金属の溶出(ノート)」食品衛生学雑誌38巻3号(1997年)。ppbは、10億分の1を表す濃度の単位。「クロムより高い」は、同じ試験のクロムの検出限界(5ppb)との比較。同じ論文のクエン酸(柑橘類などに含まれる酸)0.5%を使った条件では、フォークからニッケルが19〜33ppb溶け出している。

つまり「ゼロだと確かめられた」のではなく、「測れないほど少なかった」です。

その後、感度の高い測定器を使ったアメリカの研究(2013年)では、ステンレス鍋でトマトソースを長時間煮込むとニッケルが溶け出すことが確かめられました。著者らは、避けることの効果はまだ分かっていないとしつつ、ニッケルやクロムに敏感な人がステンレスを避けるという勧めは理にかなうかもしれない、と述べています。

Kamerudほか、Journal of Agricultural and Food Chemistry 61巻39号(2013年)。酸の強いソースを数時間から20時間煮込む条件での測定であり、水筒に飲み物を入れる使い方とは温度も時間も大きく違う。この数字をそのまま水筒に当てはめることはできない。

まとめると、こうなります。ふだんの使い方で心配するほどの量が出た報告はない。それでも、心配のもとを断ちたいなら「ステンレスからは出ない」という前提で選ばないほうが確実です。

頭痛や吐き気は、アレルギーとは別の話です

調べていると「溶け出した金属で頭痛が起きる」という記述に出会います。これはアレルギーではなく、中毒の話です。かゆみやかぶれとして皮膚に出る免疫の反応(アレルギー)とは、仕組みが別です。

中毒の実例として知られているのは2008年の事故です。内部が壊れた水筒にスポーツ飲料を入れたところ、ふだん飲み物が触れない保温構造の中まで飲料が入り込み、銅が溶け出しました。飲んだ6人が頭痛やめまい、吐き気を起こしています。

東京都保健医療局「金属製の水筒に飲み物を入れる際の注意点」食品安全FAQ(2024年時点の掲載内容)。飲料は青緑色に変わっており、水筒の内部破損という前提条件があった。

壊れていない水筒で、ふつうに使っていて起きた話ではありません。サビや破損のある水筒に酸性の飲み物を長く入れない。この一般の注意を守っていれば、アレルギーの素材選びとは切り離して考えられます。

金属を避けるか、反応の報告が少ない金属を選ぶか

選び方は2つに分かれます。

1つめは、金属に触れない水筒を選ぶ道。樹脂やガラスの水筒なら、金属は唇にも飲み物にも触れません。ただし保温・保冷のための真空二重構造(壁を二重にして間を真空にした作り)は金属で作られるため、温度を保ちたい人には選択肢が狭くなります。

内面コーティングのステンレスも、この仲間です。膜が飲み物と金属の間に入ります。ただし膜は使ううちに傷み、剥がれた所からは金属が出ます。また、唇が触れる飲み口までコーティングされているかは製品ごとに違うため、内側だけでなく飲み口の素材も表示で確かめてください。

素材は、本体の裏や取扱説明書の「材質」欄で確かめられます。内びん(内側)とフタ・パッキンが分けて書かれていれば、口に触れる部位の素材もそこから分かります。

2つめは、反応の報告が少ない金属を選ぶ道。その代表がチタンです。チタンは人工の関節や歯の土台など、体の中に長く入れておく医療材料に使われてきました。

チタンの表面には不動態皮膜(金属の表面に自然にできる、サビを防ぐごく薄い膜)があります。2022年の研究では、この膜の性質が、チタンが体になじみやすい理由の一つを裏づけると考えられています。

塙隆夫教授ら(東京医科歯科大学、大阪大学との共同研究)Science and Technology of Advanced Materials(2022年)。医療材料としての研究であり、飲料容器を試験したものではない。

ただし、チタンでもアレルギーの症例報告はあります。「チタンなら出ない」とは言えません。すでに症状のある方や原因が分からない方は、水筒を選ぶ前にパッチテストで原因の金属を確かめるのが順序として先です。

絵彩は、飲み口も内側も純チタンです

絵彩は純チタン(純度99.8%。ほかの金属をほとんど混ぜないチタンだけの素材)の水筒で、内側は無塗装です。ニッケルを含む合金でも、剥がれる心配のあるコーティングでもなく、チタンがそのまま出ています。

口をつけるふちも本体の一部で、素材は同じ純チタンです。フタはポリプロピレンとシリコンで、金属を使っていません。唇が触れる場所に、ニッケルを含む合金はありません。

作りは金属の真空二重構造なので、樹脂やガラスの水筒と違って、温かさ・冷たさも保てます。

何が唇と飲み物に触れるのか。それを素材の表示だけで確かめられる、シンプルな作りです。絵彩 公式サイト

まとめ

水筒選びで見るところは、飲み口と内側の素材の2か所でした。反応する金属は人によって違うので、「対応」の答えも人によって違います。

ステンレスからニッケルが「出ない」とは言い切れない。ただ、水筒が原因と特定された報告もない。分かっているのはここまでで、あとは金属を素材ごと外すか、避けたい金属を含まない素材を選ぶか。答えは、ご自身の反応する金属で決まります。

参考文献

1. 河村葉子ほか「ステンレス製器具及び食器からの金属の溶出(ノート)」食品衛生学雑誌38巻3号 170-177(1997年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shokueishi1960/38/3/38_3_170/_article/-char/ja/
2. Kamerud KL, Hobbie KA, Anderson KA「Stainless Steel Leaches Nickel and Chromium into Foods during Cooking」Journal of Agricultural and Food Chemistry 61巻39号 9495-9501(2013年)
https://doi.org/10.1021/jf402400v
3. 日本皮膚科学会「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」日本皮膚科学会雑誌130巻523頁〜(2020年)
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/130_523contact_dermatitis2020.pdf
4. 東京都保健医療局「金属製の水筒に飲み物を入れる際の注意点」食品安全FAQ(2024年時点の掲載内容)
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/anzen/anzen/food_faq/chudoku/chudoku29
5. 塙隆夫ほか(東京医科歯科大学、大阪大学との共同研究)チタンの生体適合性(体へのなじみやすさ)を表面の電子構造から説明した研究。Science and Technology of Advanced Materials(2022年)
https://www.tmd.ac.jp/press-release/20220509-1/

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